目次
はじめに
これまで多くの生徒やそのご両親と触れてきました。「中高一貫校に通って良かった。」と言ってくれる方がたくさんいます。
今回の記事は『中高一貫校のメリットとデメリット』を紹介します。現役教師でもあり保護者でも経験をもとに解説をします。
我が家は地方都市在住で、中学受験はそれほど盛んではありません。
小学時代の友人で中学受験を目指す家庭はほぼゼロ。伸び伸びと小学校時代を過ごすような環境です。クラスメイトで中学受験を目指したのは、長男を含めて3名でした。
そんな環境の中、長男は私立中高一貫校に進学しました。
関東や関西などの大都市圏の方からすると驚くかも知れませんが、私たちの地域が特別というのではなく、地方都市では中学受験はまだまだ少数派なんです。
それでも「中学受験を目指す家庭は教育に対する意識が高い。」
このことは間違いなく言えるんです。少なくとも子供の教育には関心がある。そうでなければ、わざわざ高いお金をかけて私立中学校に進学しませんよね。
同級生は中学受験というフィルターを通って集まるので、精神年齢や価値観などが共感できるのです。
子供を育てる上で環境はやっぱり大事。環境から受ける影響は計り知れないものです。
安心できる環境で6年間を過ごすことができる
我が家が中高一貫校を選んだ最大の理由です。
勉強を頑張る同級生に囲まれて、「勉強するのが当たり前」という意識は育みつつあるのではないでしょうか。少なくとも勉強を全然しない…とはなりません。
こんな人におススメ
- 中高一貫校か公立中学校かで迷っている。
- 中高一貫校に実際に通っている人の体験談を知りたい。
この記事を書いたのはこんな人
- 現在、中高一貫校の英語教師。この間、サッカー部顧問の経験あり。
- 九州地方在住の二児の父親。
- 長男は中高一貫校に通いながら強豪クラブチームに入団するも、補欠を経験。ビッグマウスですが、医学進学を目指して奮闘中。
- 長男のサッカーと勉強の両立をサポートする中で得た、知識や経験を情報発信。
- サッカー少年達が勉強の大切さに気づき、勉強を頑張るのを応援することを(大げさですが)このブログのミッションとしています。
中高一貫校の特徴【3選】
はい。
やっぱり受験や学費は気になりますよね。
メモ
教育Laboの試算によると、
- 【中学受験の場合】中学受験の費用(塾代)約238万円 私立中学校(中学3年間)約220万~290万円
- 【高校受験の場合】高校受験(塾代)約261万円
塾代は中学受験(小4~小6)高校受験(中1~中3)の3年間通塾した場合
高校受験で私立高校に入学したら、塾代はほぼ同額として、中学校3年間分の学費(約220万~290万円)が余分に必要になります。
この費用をどう考えるかですよね。
学費を抑えるために公立中高一貫校を選んだり、奨学金や授業料軽減制度を活用したり、と対策は考えられます。
>>サラリーマン共働き家庭が中高一貫校から医学部を目指すのは経済的に現実的なのか?
それでは、中高一貫校の特徴を3つ紹介します。
中高一貫校の特徴【3選】
- 高校入試がない
- 6年間、人間関係が変わらない
- 学費の無駄がない
それぞれのメリットを紹介します。
中高一貫校には高校入試がない
中高一貫校の最大の特徴=高校入試がない
【メリット】時間の有効活用
高校入試がないことで6年間を有効に活用できます。
- 学習に活用
- 部活・習い事などに活用
- 短期留学をする
- 大学附属中高一貫校という選択肢も
学習に活用
ほとんどの学校では独自のカリキュラムで先取り授業を実施します。高2までに全学習内容を終わらせて、高3で入試演習をするのが一般的のようですね。
中2までに中学3年間の学習内容を終わらせて、中3で高1、高1で高2、高2で高3内容を学習。特に難関大理系の進学を希望する生徒にはこのカリキュラムは合理的です。
一貫校ではない学校では、高校入学後から学習を始めると、理系科目(数学・理科)に関しては全範囲を終了するの受験直前になります。しかも、超高速で進みます。これでは、1年間前倒しで授業を進めている中高一貫校生に圧倒的に不利になってしまいます。
医学部進学者には中高一貫校出身が多いのも頷けます。
上図は中高一貫校とそうでない学校の進度のイメージです。高校3年生で入試対策が出来るのは圧倒的に受験に有利ですよね。
また、中高一貫校は、高校入試がない代わりに中学入試があります。似たような学力の生徒が集まるため、自分のレベルに合った授業を受けることもできます。
実際に公立中学校だと学力はどうしても上位から下位までの差が大きくなってしまいます。そうなると、授業は下のレベルに引きづられてしまいがちです。また、授業自体が成立しずらいことも。
授業のレベルが物足りなくて退屈してしまうのはあまりにももったいないですよね。残念ながら「勉強するなら塾で」という実態もあながち否定できません。
部活・習い事などに活用
部活を強化するような中高一貫校も人気があります。例えば当ブログのメインテーマであるサッカーでは、青森山田・静岡学園・神村学園など学校が中高一貫の6年間でチームを強化します。
それ以外にも、学校以外の環境を利用して様々な分野で成果を出している中高一貫校生も多いです。スポーツ、音楽、芸能、社会活動などを勉強と両立することができます。
高校受験がない分、中高一貫校生は中学時代は自分の好きなこと、得意なことに熱中する時間が豊富にあることも魅力です。
実際に長男は外部クラブチームでサッカーをして、本気で全国大会を目指しました。(実際には補欠でしたが…涙)高校からは自分のペースでサッカーを続けるのですが、高校入試がないからこそできるチャレンジだと思います。
参考記事全国中学校サッカー大会・地域大会出場校【中高一貫校】
短期留学をする
短期留学をすることもできます。高校入試がないので、中3の春休み(高校入学前)に短期海外研修プログラムがある中高一貫校が多いです。受験のない中だるみの対策も兼ねている場合もあります。
長男の学校も、コロナ禍で実施できませんでしたが、この時期に海外研修を例年実施しています。参加条件が英検準2級(中3第2回までに)取得だったので、英語学習のモチベーションは高まったようです。
大学附属中高一貫校という選択肢も
大学附属の中高一貫校は高校入試どころか大学入試もないので、6年間受験の心配をせずに時間を使えます。
実際に、早慶・MARCH・関関同立などの附属中高一貫校は大変に人気があると聞きます。地方にはそうした有名私大附属中高一貫校がないのは残念ですが…。
【デメリット】途中で環境を変えれない
シンプルに高校から学校をかわることできない。
勉強がついていけずに落ちこぼれてしまう。サッカー強豪中高一貫校に入ったけれども試合に出れそうにない。上手くいかなかった場合でも環境を変えることができません。
中学受験の時に親は冷静に(かつやや厳しめに)子供の能力や適性を見極めましょう。中学校入学を目標にするのではなく、6年間過ごすことをイメージして学校選びをしたいものです。自分に合わない環境で6年間過ごすと自己肯定感が爆下がりするという悲しい事態も起こり得るのです。
メモ
高校入試がないので勉強に対する危機感が薄れ「中だるみ」しやすい傾向にあります。中学受験が終わり気が抜けてしまうのも原因かもしれません。6年間をあまりにものんびり過ごしてしまうと、同級生と大きな学力差がついてしまうので気をつけましょう。
中高一貫校では6年間の人間関係が変わらない
人間関係が6年間変わらない=濃密な関係
【メリット】濃密な人間関係
多感な6年間を共に過ごします。この期間は非常に濃密。しかも、入試を突破し、校風に納得して選んだ学校なので価値観を共有しやすい同級生が集まります。
中学生と高校生が一緒に学校生活を送るので、身近に目標となる先輩(高校生)がいるのも魅力的です。
また、ともすれば調子に乗りがちな中学2・3年生も高校生という先輩がいるので、歯止めが効くので荒れにくい環境でもあります。
シンプルに入試を突破しているので、精神年齢も高い生徒が集まるのも荒れにくい理由の一つだと言えそうです。
【デメリット】狭い人間関係
友人関係が変わりません。うまく人間関係が築けなかった場合は心配です。
また、地方の中高一貫校には1学年の人数が少ない学校があるのも事実です。そうなると狭い人間関係で6年間が終わることもあるので注意が必要です。
気を悪くされる方もいるかもしれませんが、
偏差値の低い中高一貫校はまだまだ精神的に幼い生徒が集まりがちです。そうした環境では人間関係のトラブルが起こりやすいことは念頭に入れておきましょう。(失礼な発言で申し訳ありません。)
もちろん、先生方はしっかりとトラブルに対処してくれます。転勤のない私立中高一貫校は愛校心のある先生が多いです。
中高一貫校には金銭面の無駄がない
無駄な経費がかからない=盲点
意外かもしれませんね。もちろん、公立中学校→公立高校のルートに比べると、私立中高一貫校は学費が余計にかかるのは事実です。
しかし、高校入試対策にかかる経費もお忘れなく。高校入試向けの塾代、受験料、高校入学時の入学金(中高一貫校では、高校進級時には入学金は免除されるのが一般的です)などは中高一貫校では必要のない経費です。
また、高校受験組でも、高校から私立高校に進学するケースは当然あります。その場合は中高一貫校と学費は変わりません。さらに、高校からは世帯収入によっては授業料軽減措置を受けることができます。
確かに、私立中高一貫校に通うと授業料は高くなりますが、無駄な出費がないこともお忘れなく。
参考記事中学受験オススメ理由を紹介~中高一貫校vs有名塾+県立トップ校~
中高一貫校と県立トップ校を比較してみる(地方都市の場合)
【中高一貫校と県立トップ校の比較】学力面では?
私たちの住む九州地方では県立高校が人気です。県立トップ校は大学進学実績も申し分ありません。
さて、長男の中学校では中3から高校内容の学習がはじまり、教育業界大手の高1模試を中3で受験することになっています。
先日、その結果が返却されました。
詳細は記載しませんが、結果を紹介しますね。
県立トップ校の高1平均偏差値はさすがの65オーバー。一方で、長男の中学校の中3平均偏差値は65には及ばないものの、学区2番手県立高校とほぼ同水準で着地しました。
もちろん、上位層は県立トップ校の平均偏差値を超えています。
首都圏や関西圏の超進学校と比べれば見劣りするのでしょうが、地方の水準で言えば悲観するような数字ではありません。
地方都市の中高一貫校の中学3年生は、トップ層は県立トップ校の、アベレージ層で2番手校の高校1年生とほぼ同程度の学力だと推測できます。
中高一貫校中3トップ層=県立トップ校高1アベレージ
中高一貫校中3アベレージ層=県立2番手校高1アベレージ
数学は青チャートで演習し、英語はプログレス21(中高一貫校用テキスト・Book3英検2級程度の内容)を使っています。レベル的には、県立トップ校の1年生と同程度の学習内容と言えます。
メモ
長男は中3で英検2級に合格。英語塾には通っていません。学校の授業と直前の過去問演習で合格しました。このことからも学校の授業レベルが英検2級と同程度だとわかります。
どう思いますか?
高校受験をせず、その分1年先取り学習をすれば、多くの生徒が県立上位校高1レベルの学力を中3で習得できるのです。
何か特別なことをしているのではありません。それなり学力のある中学生だと、中学内容を早く済ませて、高校内容の学習に進めば、きちんと理解していきます。高校受験によって足止めされているに過ぎません。
【中高一貫校と県立トップ校の比較】費用面では?
高校受験のために塾に通いますよね?
塾代がバカになりません。(←おい、言い方)
私たちの学区の県立トップ校(偏差値69)の定員280名中、約120名が地元有名塾出身です。1学年のおおよそ40%が地元有名塾出身ということになります。
地元有名塾の授業料は、(HPでは詳細は発表していなのですが)伝え聞いた話によると、
中1 約21,000円~約26,000円
中2 約22,000円~約32,000円
中3 約33,000円~約40,000円
*上記費用はクラスのレベルにより変動します。クラスが上がれば(コマ数が増えるので)授業料が高くなります。加えて、教材費・模試代・長期休暇中の講習代などが必要です。
ちなみに、長男の中学校の学費(諸経費込み)で月額41,300円。
塾に通えば月謝以外にも長期休暇中の講習費などがかかることを考えれば、中高一貫校の学費よりもむしろ高いくらいです。
ちなみに、長男は中学時代は通塾していないので、塾代は一切かかりませんでした。
中高一貫校に向いている人は?
ここまで解説してきた内容を踏まえて中高一貫校に向いている人を紹介します。
ズバリ、『目標がはっきりしている人』です。
勉強を頑張って良い大学に入りたい。医者になりたい。弁護士になりたい。などなど。
もしくはサッカーを頑張りたいなどスポーツや芸能などでもそうです。高校卒業後の目標がはっきりしている人にとっては高校入試がなく、同じ目的や学力レベルの人が集まる環境は絶対におすすめです。
逆に、目標がはっきりしている小学生がいれば自分に合った中高一貫校に進学してのびのびと充実した6年間を過ごしてください。
中高一貫校に向いている人=『目標がはっきりしている人』
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まとめ
率直な感想は
「中高一貫校に通わせて良かった。」
です。
子供に合った学校であれば、安心して学校に通わすことができます。我が家の2人の子供も楽しそうに学校に通っているので親としては何よりです。
一つだけ言わせてもらうと、偏差値だけにとらわれないということなんです。
東大や京大、医学部を目指すのであれば難関中高一貫校が良いのでしょうが、実際にわが子にそこまで望みますか?早慶・MARCH・関関同立・地方国立大学であればほとんどの中高一貫校で合格実績があります。
偏差値の低い学校は偏差値の高い学校の劣化版ではありません。それぞれの学校が工夫して魅力的な教育をしているのです。
中高一貫校にも関心を向けて、わが子に相応しい学校を探してみてください。是非、身近にある中高一貫校のオープンスクールなどに参加して、学校の雰囲気を実際に体験してみてください。もしかすると、中高一貫校の魅力に気づくかもしれませんよ。
中高一貫校の特徴【3選】
- 高校入試がない
- 6年間、人間関係が変わらない
- 学費の無駄がない
こうした特徴があります。これらはメリットにもデメリットになることもあります。また、中高一貫校と公立中から県立トップ校の学力を比較してみると、中3の段階で上位層はトップ校と平均層でも2番手校の高1レベルの学力が身についているようです。目標がはっきりしている人は中高一貫校が向いていると言えます。
さて、中学受験に関心のあるかたは、中学受験で役立つオンライン家庭教師(個別指導)を紹介しています。興味のある方はこちらの記事をチェックしてみてください。
オススメ
中学受験は学力が高い生徒だけのものではありません。偏差値だけに目を向けずわが子に本当に合う学校を見つけてください。
当ブログはサッカーと勉強の文武両道をメインテーマにしています。サッカー少年たちの「ゆる中学受験」を紹介しています。興味のある方はチェックしてみてください!